バター・チキンButter Chicken レシピ
मुर्ग़ मखनीムルグ・マカニー

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バター・チキンは、タンドール(壺型の窯)で焼いた鶏肉を、トマトとバターと生クリームのソースで煮たデリーの料理です。日本のインド料理店でもおなじみです。この記事では、インドの料理家サンジーヴ・カプールのヒンディー語のレシピにならって、玉ねぎもカシューナッツも使わない、トマトとバターが主役のすっきりした味に仕上げます。
家庭では、タンドールの代わりにオーブンの最高温度で鶏肉を焼き、ソースは完熟トマトを煮て裏ごしして作ります。
バター・チキンとは
ヒンディー語・ウルドゥー語の料理名としては「ムルグ・マカニー」(मुर्ग़ मखनी)とも呼ばれます。ムルグは鶏、マカニーは「バター(マッカン)を使った」という意味です。
デリーのモーティー・マハルから
よく知られている話では、バター・チキンはデリーの旧市街ダリヤガンジで開いたレストラン「モーティー・マハル」で生まれました。1947年のインドとパキスタンの分離独立のあと、現在のパキスタンのペシャーワルから移ってきたクンダン・ラール・グジュラールらが開いた店です。
店の看板は、ペシャーワル時代に考えたとされるタンドーリー・チキンでした。売れ残ると冷めて乾いてしまうため、トマトとバターとクリームのソースで煮直して出したのが、バター・チキンの始まりとされています。黒いウラド豆をバターとクリームで煮込む「ダール・マカニー」も、同じ店から生まれたと伝えられています。
ただし、誰がどこで考えたのかは、記録で確かめられていません。2024年には、モーティー・マハルを経営するグジュラール家が、共同創業者だったとするジャッギー家の店「ダリヤガンジ」を相手に、デリー高等裁判所に訴えを起こしました。ダリヤガンジが「バター・チキンとダール・マカニーの考案者」を名乗る宣伝をやめるよう求めたもので、インドで大きな話題になりました。
この裁判で、グジュラール家は分離独立の前、ペシャーワルにいた頃にグジュラールが考えたと主張し、ジャッギー家は1947年にデリーで店を開いたあとに生まれたと主張しています。
古典的な作り方と、いまの店の作り方
サンジーヴ・カプールのヒンディー語のレシピは、トマトをバターで煮て裏ごししたソースに、生クリームとカスーリー・メーティー(乾燥したフェヌグリークの葉)とはちみつを加える、材料の少ないものです。モーティー・マハルが公開しているレシピも、玉ねぎを少し炒めるほかは、トマトとバターと生クリームが中心です。
一方で、玉ねぎをたっぷり炒めてから煮たり、カシューナッツのペーストでとろみと甘みを足したりする作り方も広く見られます。この記事ではトマトとバターが主役の作り方を紹介し、カシューナッツを入れる方法は後半で触れます。カスーリー・メーティーは、香りをはっきり出すために、カプールのレシピより多めにしています。
バター・チキンのレシピ:材料(4人分)
下ごしらえ 2時間45分(漬け込みを含む) 加熱 1時間
- カシミーリー・チリ10g
- ガラム・マサラ1.5g
- カスーリー・メーティー1g
- グリーンカルダモン0.8g
- メース0.5g
下味(2回目)
トマトのソース
仕上げ
作り方
1回目の下味をつける
鶏肉を4〜5cm角に切り、表面に浅い切り込みを数本入れる。塩4g、カシミーリー・チリパウダー2.5g、レモン汁15mlをもみ込み、冷蔵庫で30分おく。
2回目の下味をつける
ボウルにギリシャヨーグルト120g、しょうが10g、にんにく10g、カシミーリー・チリパウダー2.5g、ガラム・マサラ1g、マスタードオイル9g、塩2gを混ぜ、鶏肉を加えてよくからめる。冷蔵庫で2時間〜一晩おく。
鶏肉を焼く
オーブンを最高温度(250℃前後)で予熱する。天板に網をのせて鶏肉を間隔をあけて並べ、溶かしたギー13gを表面に塗る。上段で12〜15分、ところどころに焦げ目がつくまで焼く。中まで完全に火が通っていなくてよい(ソースで煮て仕上げる)。
トマトのソースを煮る
トマトをざく切りにする。カルダモンはさやに切り目を入れる。鍋にバター30gを中火で溶かし、カルダモンとメースを30秒炒める。しょうが5gとにんにく5gを加えて30秒炒め、トマト、カシミーリー・チリパウダー5g、塩6g、水100mlを加える。ふたをして、トマトが煮くずれるまで弱めの中火で15〜20分煮る。
裏ごしする
カルダモンとメースを取り出し、ハンドブレンダーでなめらかにする。目の細かいざるで裏ごしして、皮と種を除く。
鶏肉をソースで煮る
裏ごししたソースを鍋に戻し、中火で5分ほど、軽くとろみがつくまで煮詰める。焼いた鶏肉を天板の焼き汁ごと加え、弱めの中火で8〜10分、鶏肉の中まで火が通るまで煮る。
バターと生クリームで仕上げる
弱火にし、バター30gを数回に分けて加え、そのつど混ぜて溶かす。はちみつ10gと生クリーム100mlを加え、カスーリー・メーティー1gを手のひらでもみながら加え、ガラム・マサラ0.5gを振る。煮立てないようにして2分温めたら火を止める。
ナンやジーラ・ライス(クミンで炊いたバスマティ・ライス)を添えて食べます。
料理科学:オーブンの最高温度で焼く理由
ソースで煮るだけでは焼いた香りがつかない
タンドーリー・チキンの香ばしさは、肉の表面で起きるメイラード反応によるものです。たんぱく質と糖が反応して、焼き色と焼いた香りが生まれます。この反応が勢いよく進むのは、表面がおおむね120〜150℃を超えてからです。
ソースの中で煮ている鶏肉は、水分がある限り100℃前後までしか上がりません。生の鶏肉をそのままソースで煮ると、柔らかくはなっても、バター・チキンらしい焼いた香りがつきません。先に高温で焼いてからソースに入れるのはそのためです。タンドールの中は家庭のオーブンよりはるかに高温なので、家庭ではオーブンを最高温度にして、鶏肉どうしの間隔をあけ、蒸気がこもらないように焼きます。
水切りした濃いヨーグルトを使う理由
ヨーグルトの酸で肉が中まで柔らかくなる、と説明されることがありますが、酸が効くのは肉の表面だけです。ヨーグルトの役目は、スパイスを肉の表面にとどめる衣になることと、焼いたときに乳のたんぱく質と乳糖が色づいて香ばしさを足すことです。
水分の多いヨーグルトのままだと、焼くときに水分が蒸発するあいだ表面の温度が上がらず、焼き色がつく前に肉に火が通ってしまいます。水切りした濃いヨーグルトを使うと衣が厚く、短い時間で焦げ目がつきます。
料理科学:生クリームが分離しない理由
トマトのソースは酸性です。牛乳を酸と一緒に煮ると、牛乳のたんぱく質(カゼイン)が固まって、ぽろぽろと分離します。
乳脂肪分の高い生クリームは、同じように煮ても分離しにくくなります。脂肪が多いぶんカゼインが少ないうえ、脂肪の粒の表面がカゼインを抱え込むので、固まりができにくいからです。料理科学者のハロルド・マギーは、乳脂肪分がおよそ25%を超えるクリームなら煮ても分離しにくいとしています。この記事で乳脂肪分35%以上の生クリームを指定しているのはそのためで、牛乳や低脂肪のクリームで代用すると分離しやすくなります。
仕上げのバターを弱火で少しずつ溶かし混ぜるのは、バターの脂をソースの水分に細かく散らして、つやのあるソースにするためです。強く煮立てると脂が分かれて表面に浮きます。
カシューナッツを入れる作り方
レストランのような、とろみが強く甘みのあるソースにしたいときは、カシューナッツ30gを熱湯に15分浸し、手順4でトマトと一緒に煮てからハンドブレンダーにかけます。インドでは、真っ赤に熾した炭を小さな器に入れてギーをたらし、すぐにふたをして、その煙で鶏肉やカシューナッツをいぶす「ドゥンガール」という方法で燻製の香りをつけることもあります。
手に入りにくい材料の代用
- カシミーリー・チリパウダー:色が濃く、辛さは穏やかな唐辛子の粉です。パプリカパウダーを同じ量使い、辛みを足したいときは一味唐辛子を小さじ1/4まで加えます。
- マスタードオイル:サラダ油で代用できます。マスタードオイル特有のツンとした香りはなくなります。
- メース:ナツメグの種を包む皮です。ナツメグパウダー小さじ1/8で代用できます。
- 完熟トマト:トマトの水煮缶(ホール)2缶(800g)で代用できます。手順4で加える水は50mlにします。
- ギリシャヨーグルト:プレーンヨーグルト250gを、キッチンペーパーを敷いたざるにのせて冷蔵庫で2時間水切りすると、約120gの濃いヨーグルトになります。
- ギー:食塩不使用バターを溶かして使います。
保存
- 冷蔵:保存容器に入れて2日
- 冷凍:手順6まで終えた状態で1か月。解凍して温め直してから、手順7を行います
もっと知りたい人へ
出典
- Sanjeev Kapoor「बटर चिकन」(ヒンディー語)
- Sanjeev Kapoor「Butter Chicken (murgh makhni)」(英語)
- Ranveer Brar「Butter Chicken with Chef Sanjyot」(英語)
- The Masala Bazaar「बटर चिकन」(マラーティー語)
- Moti Mahal「Recipes for tandoori and butter chicken」(英語)
- The Quint「Moti Mahal or Daryaganj? Delhi HC Steps in To Settle the Butter Chicken Debate」(英語)
- The Statesman「Who really invented butter chicken and dal makhani? Delhi HC to decide」(英語)
- The Week「Betting on butter chicken」(英語)
- Wikipedia「Butter chicken」(英語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。